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雪が……全くない!?

 4月18日、今シーズン最初の山小屋入りをしました。全国的に暖冬で雪の少ない冬でしたが、山はどうかわからず、例年と同じくらいの時期になりました。

 町から林道へ入ると、すぐに「いつもより圧倒的に少ない」ということは一目瞭然でした。ダムを抜け、いつも大量に雪が残っている杉林に差し掛かっても、雪は見当たりません。少ないというより、全くないのです!「まさか…」と思いながら、さらに奥へ進んでも一向に雪が見えません。林道周辺のみならず、周辺の山々にも全くないのです。谷間や日陰など、5月下旬になっても残っているようなところにさえ、全くありません。気が付くと朝日鉱泉まで1.5kmの「山の神様」のところまで来ていました。ここまで一切雪を見ていません。いよいよ次のカーブを曲がったら朝日鉱泉といういつも最後の最後まで雪が残る斜面で、ようやく残雪がありました。

 カーブを過ぎて、建物の屋根が見えてきて唖然としました。建物や周辺にもほとんど雪がないのです「ウソだろぉ…!」信じられません。朝日鉱泉正面に見える大朝日岳以外の山にもほぼ雪がありませんでした。木々に葉はないので、まるで秋のようです。ここ5,6年雪が多かったということは抜きにしても、この時期でここまで雪がないということは初めてです。

今年の朝日鉱泉正面 2016.4.18
今年の朝日鉱泉正面 2016.4.18
ほぼ同じ時期の2015年
ほぼ同じ時期の2015年

▲大朝日岳以外には雪がない…
▲大朝日岳以外には雪がない…

 まずは雪堀をして、雪囲いを外して、テラスを出して…という、いつもの雪との格闘が皆無で作業が進みました。何か、秋に雪囲いをしてからそのままのような、へんな気分です。父曰く、40年でここまでこの時期で雪がないのは初めてということでした。

 

▲朝日鉱泉手前2.5kmの林道付近は徐々に芽吹きが始まっている
▲朝日鉱泉手前2.5kmの林道付近は徐々に芽吹きが始まっている

 ただ、朝日鉱泉周辺の木々の芽吹きはまだ始まっておらず、植物の感じからすると例年と比べ10日くらい季節が早いといった様子です。雪の様子はどう見ても1か月は早く、5月下旬のようです。とはいっても、芽吹きはどんどん上がってきており、これから1週間もすればブナを筆頭にあたりは萌黄色の新緑につつまれることでしょう。

 もう一つ気になるのは、すでにこの時期で朝日川に雪代があまり入っておらず、増水や濁りが少ないということです。山に入った日もうす曇りではありましたが、気温は15度

▲午後2時過ぎでもほとんど増水していない朝日川
▲午後2時過ぎでもほとんど増水していない朝日川

くらいまでは上がり、いつもであれば午後になると雪解けの水が川に大量に流れ込み、この時期は濁流となっているはずですが、午後2時をすぎても、ほんの少し増水する程度でした。これは本当に山の中にあまり雪がもうないということを意味しているのではないかと思います。

 さらに言えば、朝日鉱泉の建物の陰に残っている残雪を触ってみたところ、いつもに比べて非常に柔らかく感じました。いつもは大量の雪の重みで圧縮されたり、屋根から落ちてきて締め固まり、また厳寒期の寒さで氷のように固くなって、シャベルがあまり入らないような固い層が厚くありますがそれがありません。察するに本当にこの山奥でも雪自体があまり降っていないのではないかと思います。また寒さも緩かったのではないでしょうか。これでは少し気温が上がっただけでどんどん溶けてしまうはずです。山の谷間や日陰にも雪がないのはこのせいかと思われます。

▲雪解けとともに春を告げるイワウチワ
▲雪解けとともに春を告げるイワウチワ
▲いつもは雪が最後まで残る場所ですでに咲いていたショウジョウバカマ
▲いつもは雪が最後まで残る場所ですでに咲いていたショウジョウバカマ

 雪が少ないということは、山開け作業はスムーズに進むし、朝日鉱泉までの林道も問題なく通れるし、非常に助かることではあります。ですが、ここまで少ないとなると、今度は夏の水不足や山菜や動植物への影響など気になる部分も少なからずあります。

 雪は少なければ少ないほど楽で良いといつも思っていながら、いざ雪がここまで少ないと色々と不安になってくる、そんな自分の矛盾したエゴな考えに情けなくなってしまいました。

 思わず「山の神様」に「なんとか大きな気候の変動のない年になるようにお願いします」とお願いしてしまいました。